П р и в е т ( プリヴェート : こんにちは )!私はロシアの首都モスクワから参りましたアナスタシアと申します。(2回目の投稿です!)前回の記事では東京都 板橋区の魅力についてご紹介させていただいたのですが、今回は私の大好きな日本文学、三島由紀夫の作品を通して「金閣寺」の魅力をご紹介したいと思います。突然ですが皆さんは三島由紀夫が書いた「金閣寺」を読んだことがありますか?私は学生の頃から日本文学や日本語の「音」に強く興味を持っていたので、古典文学から近代文学まで様々なジャンルの日本文学を読んだのですが、その中でも1番強い印象を受けた作品が三島由紀夫の「金閣寺」でした。
「金閣寺」では絶対的な「美」の象徴(美の象徴=金閣寺)が主人公の魂に強い影響を与え、破滅的な状態まで追い込んでいく様子を描いているのですが、それほどまでに人を魅了す「金閣寺」とはどのようなものなのか皆さんも気になりませんか?結論を先に伝えておくと、金閣寺は三島由紀夫の「金閣寺」を読んだり、歴史や情報を事前に勉強したりしなくても感動することはできます。美しいです。しかし、「金閣寺」という作品や時代背景を少し知った状態で見ると、見え方が変わりますよ!それでは、まずは金閣寺に関する情報と、金閣寺の魅力についてご紹介したいと思います。
■金閣寺の簡単な情報
・建てた人:室町幕府3代将軍 足利義満(あしかが よしみつ)
・建てた目的:自分の権力を見せつけるため。または別荘として使うため※諸説あり
・完成:1397年(2階3階だけに金箔が貼られている)
・金閣寺の正式名称:鹿苑寺(ろくおんじ)
※金閣寺はニックネーム
・金閣寺の放火事件:1950年
※この放火事件は小説の題材になった事件
・金閣寺復元:1955年(1905年の資料を元に復元)
・世界遺産登録:1994年
※金閣寺は世界遺産に登録されていますが、国宝ではありません
■金閣寺/鹿苑寺の魅力
①様々な建築様式が取り入れられた世界でも珍しい3層構成の構造
②足利義満の盆栽から移植されたと言われている「陸舟の松(りくしゅうのまつ)」
③金閣寺境内の約3分の2を占める美しい鹿苑寺庭園の中心にある池「鏡湖池(きょうこち)」
■①様々な建築様式が取り入れられた世界でも珍しい3層構成の構造
※金閣寺の中は見学することができません。外側から眺めることはできます!
※金閣寺と呼ばれている建物の正式名所は舎利殿(しゃりでん)といい、仏教の創始者「お釈迦様」の骨を祀っているところという意味です。(舎利=お釈迦様の骨)
※庭園や建築は仏教の楽園「極楽浄土(ごくらくじょうど)」をイメージして造られたと言われています
第1層:放水院(ほうすいいん)/寝殿造 (しんでんづくり) の阿弥陀堂
・特徴:壁がないため、夏は涼しく、冬は寒い
・放水院の「放水」とは煩悩(コンプレックス)を洗い清めるという意味(仏教の考え方)
平安時代に上流階級の貴族が住んでいた場所と同じ様式で設計されていて、1番偉い人の寝殿を中心にカタカナの「コ」の字型の廊下で囲まれています。屏風(パーテーション)などだけで部屋を仕切るため風通しの良い部屋ですが、冬はとても寒いという特徴があります。人が住む場所としてはむいていません。現在この場所には中央に「宝冠釈迦如来像(ほうかんしゃかにょらいぞう)」左側に金閣寺を建てた「足利義満像」が置いてあります。
第2層:潮音洞(ちょうおんどう)/武家造り(ぶけづくり)の観音堂
・特徴:壁がある
・真実が海の音のように遠くからやってくるという意味が込められている
・戸:舞良戸(まいらど)と呼ばれる桟(さん=細い木のこと)を横にしてつくられた引き違い戸
第1層の放水院と第2層の潮音洞は造りが少し似ているのですが、1番違うところは第1層とは違い壁があることです。(外から眺めてもはっきりと違いがわかります)そして、第2層からは金箔が貼られています。現在この場所には岩屋観音像と四天王像が置いてあります。
第3層:究竟頂(くっきょうちょう)/禅宗(ぜんしゅう)様の仏間
・特徴:中国の宋で使われていた様式
・窓:花頭窓(かとうまど)という窓の上がアーチ状になっている窓で、これも中国のデザイン
第3層の究竟頂には第2層の潮音洞と同じく柱や天井に金箔が貼ってあるのですが、床は漆塗りです。そして、この場所に舎利(しゃり=お釈迦様の骨)が安置されています。
屋根:宝形造り(ほうぎょうづくり)
・特徴:4枚の屋根がすべて三角形になっていて、水平の棟が無い屋根
・日本に昔から伝わる伝統的手法「こけら葺き(こけらぶき)」の屋根
・1番上には「鳳凰(ほうおう)と呼ばれる想像上の鳥が飾られている(現代見ることのできる鳳凰は3代目で1代目の鳳凰だけが放火の時に別の場所へ置かれていたため当時のまま保存されている)
■②足利義満の盆栽から移植されたと言われている「陸舟の松(りくしゅうのまつ)」
この松は、京都3松の1つで、金閣寺を建てた足利義満が自分で育てた松をこの場所へ植えたと言われています。ちなみに松の樹齢は600年を超えているといわれています。この松は金閣寺の内側とは違い、実際に近くで見ることが出来るので、皆さんも近くで「陸舟の松(りくしゅうのまつ)」を見てみてください!
■③金閣寺境内の約3分の2を占める美しい鹿苑寺庭園の中心にある池「鏡湖池(きょうこち)」
この池は国の特別史跡・特別名勝に指定されている鹿苑寺庭園の中心にあり、池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)と呼ばれているのですが、池の周囲を歩いて庭園観賞するためにつくられた庭園です。朝日に照らされ金色に輝く金閣寺を鏡のように映し出す姿は圧巻ですよ。現在、金閣寺の参拝コースは決まっているため指定されていう順番通りに進むことしかできないのですが、金閣寺が建てられた当時は池に船を浮かべて船の上から庭園観賞することもあったそうです。600年前の貴族がどのようにこの場所で楽しんでいたのか、違う文化の国から訪れた私達にとって想像することは少し難しいと思うのですが、少しでもこの場所が作られた理由を知った後に見れば見え方も変わると思いませんか?金閣寺はとても有名な場所なので、様々な国の言葉に翻訳されたパンフレットや本があります。この場所へ訪れる時は是非、母国語に翻訳されたガイドブックなどをみてから訪れることをオススメします。
■三島由紀夫の小説「金閣寺」をとおして見る金閣寺
・作品の舞台:戦争が始まる前から戦争が終わった後の京都
・作品の背景にあるもの:戦後、腐敗していく日本社会
・主人公:溝口(みぞぐち)※放火した時は21歳
※京都の田舎にある貧しい寺の息子
※幼い頃から沢山コンプレックスがあり、中学生になっても友達がいない
※父親から「金閣寺ほど美しい物は地上にない」と言われて育った結果、金閣寺は絶対的な「美」の象徴だと強く思うようになる
作品の中には主人公の溝口以外にも、
・溝口の父親
・憧れの美少女・有為子(ういこ)
・徒弟仲間で憧れの美少年・鶴川(つるかわ)
・金閣寺の住職・老師(ろうし)
・生まれつき足に障害がある大学時代からの友人・柏木(かしわぎ)
といった人物が登場するのですが、その人物達に対する基準(価値観)も全て「金閣寺」の美しさです。
最初の方でも紹介したのですが、小説「金閣寺」は絶対的な「美」の象徴(美の象徴=金閣寺)が主人公の魂に強い影響を与え、破滅的な状態まで追い込んでいく様子を描いた作品です。そのため、この本を読んだ後に金閣寺へ訪れると、金箔で覆われた圧倒的な存在感に少し圧倒されてしまうかもしれません。私自身、小説を読んでから実際にこの場所へ訪れるまで5年かかったのですが、待ち望んでいた場所なのに金閣寺へ行く前は少し緊張をしてしまいました。なぜなら初めて金閣寺を見た溝口少年は金閣寺の美しさに憑りつかれ「私の心が描き出した金閣は途方もないものだった」と激しく幻滅すからです。しかし、私の場合は金閣寺の美しさと見事な紅葉のコラボレーションに心打たれ、最初の15分間は輝く金閣寺から目を離さずにじっと見つめていたことを今でも覚えています。あの時の私は金閣寺を通してようやく三島由紀夫の気持ちを理解することが出来たのだと感じ本当に涙が溢れそうになるほど感動しました。この時のことを具体的に言葉で表現することは難しいのですが、読めば必ず理解できると思います。皆さんも是非、小説「金閣寺」を読んでから訪れてみてください。
■まとめ
金閣寺(鹿苑寺)以外にも京都には魅力的な場所が沢山あるので「どこから見ればいいの?」「何を見ればいいの?」と悩む人が沢山いると思います。もし、少しでも悩んだのなら、まずは金閣寺へ足を運んでみてはいかがでしょうか?今回ご紹介した小説「金閣寺」や歴史を知った上で金閣寺を見ると本当に心の底から感動することが出来ると思います。私が金閣寺へ訪れた時期は秋だったのですが、春に行けば桜、夏に行けば新緑、秋に行けば紅葉、冬に行けば雪化粧につつまれた金閣寺を堪能することができるので、是非時間がある時に訪れてみてください。そして、私の記事を読んで、「私も三島由紀夫が描いた小説「金閣寺」の世界観を堪能したい!」ともった方がいれば是非、小説も読んでみてください。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。