エンタメ
2023.05.26

中国出身の私がオススメする日本のエンタメ:ドラマ「ブラッシュアップライフ」

 こんにちは!2022年の11月に中国の広東省深圳市から来日した留学生のジャーン ルイウェンです。前回は私が将来挑戦したいことや、沖縄県名護市の魅力的な場所を3カ所ご紹介させていただきましたが、今回は日本文化や日本語が楽しく学べるドラマ「ブラッシュアップライフ」をご紹介したいと思います。このドラマは、主人公の女性、近藤麻美(こんどうあさみ)が自分の死をきっかけに何度も同じ人生を生まれ変わって徳を積むタイムリープ作品ですが、物語の中に登場する音楽や主人公たちの服装、ヘアスタイル、遊びは全て90年代の日本で実際に流行ったものです。また、この作品は1話45分×全10話ですが、毎回物語の中にメッセージが隠されていて、そのメッセージが最終回へと繋がる重要な伏線となっています。

 私は普段から日本のドラマを通してリアルな日本語の使い方やイントネーション、日本人特有の考え方を学んでいるのですが、このドラマは今まで見た作品の中で最も日本人が見て共感する部分が多かったと話題になった作品なので、留学生の皆さんもこのドラマを見れば、今よりも楽しく日本語を勉強できると思います。それでは、ドラマの登場人物や、このドラマの魅力についてご紹介したいと思います。

■ドラマ「ブラッシュアップライフ」の主な登場人物

・主人公:近藤麻美(あーちん)/安藤サクラさん
・友達:門倉夏希(なっち)/夏帆さん
・友達:米川美穂(みーぽん)/木南晴夏さん
・友達:宇野真里(まりりん)/水川あさみさん
・死後の世界の案内人/バカリズムさん

※放送時期23年1月~3月の日曜日22時~/日本テレビ
※「hulu(フールー)」というアプリを使えば現在でも見ることができます

■ドラマを楽しむために覚えていて欲しいポイント

※主人公は生まれてから30代までの間を何度もタイムリープしますが、タイムリープ前の記憶は持ったまま生まれ変わります。

※主人公が事故にあった後に目覚める白い空間は「死後の世界」です。この場所にたどり着いた人は、死後の世界の案内人から前世を0歳からやりなおすか、前世で徳を積んだぶんの生き物に生まれ変わるか選択を迫られます。ちなみに、主人公の近藤麻美が第1話で言い渡されたのは前世を0歳からやりなおすか、南米グァテマラのオオアリクイへの転生かの2択でした。

■ドラマ「ブラッシュアップライフ」の魅力

①日本の懐メロを通して日本語の意味を学ぶことができる

 私は日本の音楽が大好きなので、まずはこのドラマで使われている音楽についてご紹介したいと思います。このドラマのエンディングでは物語の設定年代に流行した懐メロ(懐かしいメロディー)が必ず流れているのですが、「耳に心地よいメロディーだな」と聞き流してはいけません。なぜなら、エンディングで流れている曲の歌詞がドラマのストーリーと重なるようになっているからです。たとえば、第1話のエンディング。ここでは1993年に流行った国武万里さんの歌う「ポケベルが鳴らなくて」という曲が流れるのですが、この歌の歌詞は不倫をした女性目線で書かれています。

【ネタバレ注意】ドラマの中では人生1回目の時にはわからなかった友達「玲奈ちゃん」の転園が、人生2回目では生まれ変わる前の記憶(大人の記憶)があることで、玲奈ちゃんのパパと通っていた保育園の洋子先生が不倫していて、2人の不倫が原因で玲奈ちゃんが転園したということに気付きます。そこで人生2回目で幼稚園児の主人公、近藤麻美は前世の記憶をもとに玲奈ちゃんのパパと洋子先生2人の不倫を当時流行していたポケベルを使って未然に防ぐのですが、ドラマの内容を知った後に曲を聞くと不倫をしている洋子先生の感情と重なります。(※ポケベル:Pager(ページャー)のこと)

【歌詞】

ポケベルが鳴らなくて 恋が待ちぼうけしてる
ねぇ あなたは今どこで 何をしているの?

 今回紹介した曲は不倫した女性目線の歌詞なので個人的には深く理解しなくてもいいと思うのですが、1曲1曲注意しながら聞くと日本語の意味を深く理解することができます。皆さんも是非、ドラマを見る時はエンディングで流れる歌の歌詞に注目しながら見てみてください。

②ドラマを通して日本人特有の心理を理解することができる

 留学生の皆さんもご存じの通り、日本人は曖昧な言葉を使うことが多く、その曖昧な言葉に対して複数の意味がこめられていることがあります。そのため、私も留学を始めた頃は、1つの言葉に対して複数の意味があるということが理解できず何度も苦労したのですが、ドラマ「ブラッシュアップライフ」の脚本家で、作中でも「死後の世界の案内人」として登場するバカリズムさんは、ドラマを見た30代の日本人女性から「なぜ私達女性の気持ちがこんなに理解できるの?」と高い共感を得ました。そこで、私はドラマを見ながら作品に登場する女性達の言葉と、その裏に隠れた意味がなんなのか観察し、実際に日本人の友達とコミュニケーションを取る時に真似てみたのですが、真似ることで以前よりも日本人の友達とコミュニケーションが取りやすくなりました。

私が日本人の考え方は面白いと感じたシーン


■第1話 親友「美穂」の誕生日を祝うシーン

※誕生日プレゼントを貰って「ありがとう、嬉しい!」と言いながら周囲を気にする美穂
※そわそわしながら周囲を気にする美穂の行動に気付く麻美

麻美:流れてきに、花火がバチバチってなるやつ(ケーキ)持ってくると思った?
夏希:えっ、そうなの?(※美穂はサプライズ演出されると思ったの?という意味)
美穂:ちょっとだけ思った・・・
麻美:そうだよね。普通流れてきに、そうだもんね
夏希:えっ?もしかして、やってほしかった?(※花火が付いた誕生日ケーキでお祝いしてほしかった?)
美穂:いやいや全然、そういう事じゃない・・・だけど・・・ね。(周囲を気にする美穂)

 この時、麻美と夏希はサプライズ演出が嫌いな美穂のために「あえて」花火付きのケーキを用意しなかったと伝えるのですが、美穂は2人の行動に対して「サプライズ演出は苦手だけど、麻美が誕生日の時に同じお店、同じ店員さんの前で花火付きのケーキを用意してサプライズ演出したのに、自分だけサプライズ演出をしてもらえないのだとお店の店員さんから思われていないか気になる」と答えました。これは、日本人にとって日常的におこる些細なコミュニケーションのすれ違いだと思うのですが、私達留学生にとっては体験することがなかったコミュニケーションのすれ違いなので、これこそが日本人特有の繊細な心理なのだと学ぶことができました。

③ドラマを通して人生哲学を学ぶ

 主人公の近藤麻美は、徳を積むために何度も近藤麻美として生まれ変わるのですが、前世の記憶を持った状態で生まれ変わるため、失敗を事前に回避し続けることができた結果、個人としては少しずつ「成功者」としての人生を歩むようになります。しかし、ここで思い出してほしいのが「当初の目的はなんだったのか?」ということです。ドラマ前半の主人公は自分の人生にとって「失敗」や「不幸」だと感じていた経験を回避することで、徳を積み上げていくのですが、その行動はまるでゲームのキャラクターが攻略機能を使ってコインを集める姿と変わりません。そのため、SNSでは展開に飽きたといったコメントをよく見かけたのですが、第7話を過ぎた頃から、これまで主人公が繰り返してきたブラッシュアップの代償として、前世で関わった人や親友の人生が大きく変わったり、前半と後半でブラッシュアップに対する捉え方が変わってしまったりする展開を見てから、固定概念や目的にとらわれならが生きていると、大切な瞬間を見失い人生が色褪せてしまうのだということに気付くことが出来ました。もし、皆さんが主人公と同じように同じ人生を何度も繰り返すことができるとしたら、あなたは自分の人生をどのように過ごしますか?このドラマでは様々な角度から人生哲学について考えることができるので、皆さんも見終わった後にどう感じたのか教えてほしいです。

■まとめ

 ここまでドラマ「ブラッシュアップライフ」についてご紹介させていただきましたがいかがだったでしょうか?私のような留学生や日本で生活をしている外国人にとって日本人が考えていることや感覚を読み取ることは本当に難しいと思います。しかし、このドラマを見れば気持ちの裏側を知ることができるだけではなく、日本人と上手にコミュニケーションを取るための方法や細かい注意点なども理解することができるので留学生の皆さんは絶対見た方がいいと思います。そうすれば、自然と日本人について理解できるようになりますよ!もし、ドラマを見て不思議に感じたことや理解できないことがあれば日本人の友人と話す時の話題にもなります。留学生の皆さん、何度も言いますが本当にオススメしたい作品なので、ぜひ検索してみてください。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

ジャーン ルイウェン

国・地域
中国
居住地
東京都
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