オススメの場所
2025.11.10

カナダ出身の私が日本でオススメしたい場所 : 福井県 越前市

■ はじめに

 こんにちは、カナダ出身のサマンサ・ニコルズです。東京に住んで3年、私はこの国の伝統文化に魅せられ、最近では伝統楽器のお稽古に通ったり、日本文化を体験するツアーに参加したりしています。その中でも特に興味をもって学んでいるのが、三味線です。三味線は、わずか三本の弦と撥(ばち)だけで、静けさや激しさ、そして日本人の感性である「侘び」「寂び」「間」を音で表現できる楽器です。そのため、定期的にお稽古に通うことで、三味線を通して日本の伝統文化を全身で感じることができます。

 また、日本文化を体験するツアーに参加すると、日本では自然と芸術が密接に結びついていることに気付きます。たとえば、縄文土器のうねるような文様、神秘的な社寺建築、そして波・花・鳥などを描いた浮世絵。それらに触れるたび、私は好奇心を刺激され、自然の存在を強く感じることができます。

 そこで今回は、日本の伝統文化に興味がある方へ、昔からの伝統や文化が今も残る福井県越前市の魅力をご紹介したいと思います。

■ 越前市はどんなところ?

日本を代表する伝統工芸が集まる“職人のまち”

 越前市には約1,500年の歴史を誇る日本最古の和紙「越前和紙(えちぜんわし)」や、世界中の料理人から高い評価を得ている約700年の歴史を持つ「越前打刃物(えちぜんうちはもの)」。約850年前の平安時代末期から作られている日本六古窯の一つに数えられる焼き物「越前焼(えちぜんやき)」といった日本を代表する伝統工芸が集まる“職人のまち”として知られています。

四季を通じて「日本の原風景」を感じられる地域

 越前市は、自然・伝統・暮らしが一体となった、日本らしさが息づくまちです。満開に咲く桜、風情ある城下町、雪に包まれた街並み、そして職人の技が光る伝統工芸など、四季を通じて多彩な日本の魅力を体験できます。

 また、越前市は海・山・川に恵まれた土地ならではの、自然の恵みを生かした料理も楽しめます。冬の味覚の王様「越前ガニ」、福井県の郷土料理「越前そば」、地元の名水を使った「日本酒」など、“食”を通しても日本の深い文化を感じられる場所です。

■ オススメの場所①越前和紙の伝統工房「五十嵐製紙





 「五十嵐製紙」は、創業100年以上の歴史を誇る越前和紙の伝統工房です。私たちはここで、和紙作りに使う植物や繊維の加工工程を間近で見学し、その奥深い技術について詳しく学ぶことができました。また、五十嵐製紙では食品廃棄物を再利用した新しい和紙「フードペーパー」を開発しているのですが、独特の色合いと持続可能な取り組みに強く心を惹かれました。

 他にも、今回のツアーで最も楽しみにしていた越前和紙の伝統技法である「墨流し」に挑戦し、美しいマーブル模様のうちわやハガキ作りを体験しました。水面に墨や染料を垂らし、その模様を和紙に写し取る作業はとても難しく、思うようにいかないことも多かったのですが、短い時間ながら瞬きを忘れるほど夢中になって取り組むことができ、とても楽しい体験でした。

■ オススメの場所②越前焼の魅力を五感で楽しめる「福井陶芸館





 「福井陶芸館」は、約850年前の平安時代末期から作られている「日本六古窯」の一つ「越前焼」について、五感で楽しみながら学べる場所です。ここでは、歴史ある伝統的な越前焼の作品を間近で鑑賞したり、ろくろや手びねりで、自分だけの器作りを体験したりすることができます。
※手びねりは、粘土を手のひらや指先で伸ばしながら形を整えていく技法です。

 私はこれまで何度か陶芸を経験したことがあるので、今回は茶碗を作ることにしましたが、龍の形をした置物のような個性的な作品作りに挑戦する人もいました。小さなろくろで茶碗の土台を作り、手のひらや指先の感覚を研ぎ澄ませ、ゼロから自分の感性を頼りながら作品作りに没頭する。とても有意義な時間でした。

■ オススメの場所③越前漆器の美と技を体感できる「うるしの里会館




 「うるしの里会館」は、約1500年の歴史をもつ越前漆器の魅力を、見て・触れて・学べる体験型の施設です。ここでは、漆器の製作工程や職人の技を間近で見学できるほか、伝統の技法を使った絵付け体験なども楽しめます。

   この日私は、絵筆で素材に模様を描く絵付け体験に挑戦しました。とても繊細で高度な技術が求められる伝統工芸だということを学んだあとだったので、最初は絵筆を持つだけでも緊張しました。しかし、工房には花やキャラクターなど、さまざまな模様のステンシルシートが用意されており、それらを自由に組み合わせることで、自分好みのデザインに仕上げることができました。上の写真は、私が絵付けした手鏡です。初めてにしては、上手にできたと思いませんか?

■ オススメの場所④職人の技と熱を感じる「タケフナイフビレッジ





 タケフナイフビレッジ」の工房は、約700年の歴史を誇る「越前打刃物(えちぜんうちはもの)」を、複数の刃物会社が共同で運営する刃物産地でも珍しい共同工房です。ここでは、伝統的な鍛造技術や刃物作りの工程を見学できるほか、職人の指導のもと、自分だけのナイフ作りを体験することもできます。

 この日は、現役職人さんから直接指導してもらえる「両刃包丁教室」「小出刃研ぎ」「両刃研ぎ」には参加できなかったのですが、越前打刃物誕生の歴史にまつわる話を聞いたり、日本を代表する職人さんたちの工房を見学したりすることができました。

■ 越前市のオススメグルメ

 日本を旅するなら、地元ならではの美味しい郷土料理を味わうことが欠かせません。今回は、私が訪れたお店の中で特に美味しかったお店と料理をご紹介します。

越前そばの里/ オススメ料理:ふくいセット




 「ふくいセット」は、福井県の郷土料理「越前おろしそば」と、福井を代表するソウルフード「越前ソースカツ」を一度に楽しめる贅沢なセットです。

 越前おろしそばは、香り高くコシのあるそばの麺に、特製つゆと辛味大根おろしを絡めることで、さっぱりとした辛みとそば本来の風味を堪能できます。一方、越前ソースカツは、サクッと揚がった豚カツに甘めのソースをたっぷり絡め、ご飯と一緒に頬張れば、ジューシーな肉の旨みとご飯の甘みが口いっぱいに広がります。メニューで迷ったときは、まず「ふくいセット」を選べば間違いありません。

料亭 鎌仁別荘(かまにべっそう)/ オススメ料理:懐石料理





 2軒目は福井県越前市にある1873年創業の老舗京料理料亭「鎌仁別荘」です。ここでは、懐石料理を食べたのですが、とろけるような甘みと濃厚な旨味が特徴の越前甘エビの刺身や、すき焼きの美味しさにとても驚きました。とくに、この日は雨が降っていたので心も体も温まるカニのグラタンを一口食べた瞬間の感動は今でも忘れられません。特別な気分を味わいたいなら、ぜひ鎌仁別荘へ行ってみてください。

■ まとめ




 今回は、昔からの伝統や文化が今も残る福井県越前市をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。国や地域によって事情はさまざまですが、日本以外の国では、伝統工芸を一般の人が体験できる「体験型施設」が整備されている例は多くありません。とくに、伝統技術が「家業」や「職人の秘伝」として受け継がれる文化圏では、外部に開かれることが少ない傾向にあります。その中で、数百年にわたって受け継がれてきた技を、一般の人でも気軽に体験できる越前市は、まさに唯一無二の存在といえるでしょう。

 自然の豊かさと人々の手仕事が共に息づく越前市は、訪れる人の心をやさしく包み込む、魅力あふれるまちです。ぜひ一度、越前市で“本物の伝統”に触れてみてください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ニコルス サマンサ

国・地域
カナダ
居住地
東京都
得意カテゴリ
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