■国内外の建築家を驚かせた貴重な建築物が現存する町、愛媛県大洲市(おおずし)
自然と伝統を未来へ大切に引き継ぐ日本の田舎暮らしに憧れ来日した台湾の台北市出身、シャハンです。前回は日本で初めてオリーブ栽培に成功した美しい離島、小豆島を私のオススメスポットとして紹介させていただきましたが、今回は私が2021年から実際に暮らしている愛媛県の大洲市を私のオススメスポットとして紹介させていただこうと思います。突然ですが、皆さんは愛媛県大洲市のことを知っていますか?私が聞いたところによると、日本の方でも愛媛県の南予地域にある「大洲市」のことを知っている人は少ないそうですが、日本で暮らしているのに大洲市を知らないなんてもったいないと思います。なぜなら、大洲市には国内外の建築家を驚かせた貴重な建築物が沢山残っているからです。そこで今回は、大洲市の中でも特にオススメしたい建築物を3つ選んで紹介したいと思います。
■①2011年にミシュラン・グリーンガイド・ジャポン一つ星を獲得した「臥龍山荘 不老庵(がりゅうさんそう ふろうあん)」
まず初めに私が紹介したい場所は木蝋貿易に成功した大洲出身の豪商、河内寅次郎が別荘として建てた「臥龍山荘 不老庵」です。ここは毎年3月にフランスで販売される日本を訪れる外国人観光客向けの旅行ガイド「ミシュラングリーンガイド」で2011年に一つ星を獲得したことがあるのですが、細部まで河内寅次郎や明治の匠のこだわりが詰まった臥龍山荘は日本全国の中でも最も訪れる価値がある場所だと思います。ちなみに2016年には「臥龍山荘」の3棟(臥龍院、不老庵、文庫)が、国の重要文化財に、2021年には日本庭園史における学術上の価値が高い場所として日本国指定名勝にも指定されました。
【 オススメポイント 】
この場所は、日本屈指の匠たちがこだわり抜いて造り上げたので、透かし彫りや彫金など随所に細かい工夫がされて宝探しのような体験をすることができます。また、秋から冬にかけて肱川の流れと大洲盆地の気温の変化により城下町全体が霧に包まれる現象が発生するのですが、朝霧に包まれた臥龍山荘の庭園や不老庵は、息が止まるほど美しいです。ちなみに臥龍山荘では3月~11月の間なら貸切ることも出来るので、夏は新緑と青々とした美しい苔庭や川と山を、秋は紅葉と神秘的な朝霧を眺めながら美味しいお茶を堪能する一時を贅沢に味わってみてはいかがでしょうか?こんな特別な体験はココでしか味わうことが出来ませんよ!
■②地元民の愛情と全国の職人さんの伝統技術で実現した大洲城
次に紹介したい場所は、大洲市のシンボル大洲城です。日本では1873年に明治政府から発せられた「廃城令」の影響で貴重なお城の殆どが廃却されてしまったのですが、大洲城の場合は廃城令を免れ(城内の建造物は破却されるも天守と櫓は保存)、第2次世界大戦の空襲からも免れ、当時の設計図や関連資料がかなり充実していたこともあって2004年に全国から召集した建築史家と職人さんの技術を合わせて、外観だけではなく内部の技法まで忠実に復元されました。ちなみに、完全木造復元の天守閣は全国5つだけで大洲城はその中でも最大規模の天守閣です。凄い強運を持った天守閣だと思いませんか? 地元の人達の熱意がこもった大洲城は今や大洲市を代表するシンボルの1つとして地元以外の人達からも愛されるようになりましたが、世界中ではまだまだ知らない方が多いと思うので、日本へ訪れた際は是非、大洲城を見に大洲市へおこしください!絶対損はさせません!
【 オススメポイント 】
実は、この大洲城。2020年から「キャッスルステイ」という日本初の城泊体験ができるようになりました。歴史資料をもとに考証して再現した江戸時代の大洲藩初代藩主入城式体験や殿様の饗応料理を味わう体験ができるのは大洲城だけ!海外から訪れた記念に1日城主になって、侍の歴史と伝統建築を堪能してみてはいかがでしょうか?もしかすると、あなたの国で初めてお殿様体験をした人になれるかもしれませんよ!
■③2014年版「危機に瀕している世界のモニュメントリスト」に登録された奇跡の参籠殿
最後にご紹介するのは、大洲市で1番の強運スポット、少彦名神社奇跡の参籠殿です。ここは管理者がおらず、老朽化・荒廃して倒壊の危機だった場所なのですが、地元有志の集まりである「おすくな社中」が中心となって財団に働きかけを実施。熱心な保存活動などが評価され、なんと2014年に歴史的な建築物や遺産の保存運動を推進するアメリカのワールド・モニュメント財団により世界危機遺産リストに選定されたことで資金援助をうけることができたそうです。ちなみにこの参籠殿修復活動は、ユネスコアジア太平洋文化遺産保全賞の2016年最優秀賞を受賞しています。世界中の歴史的建造物を見てみると、有名な都市でない限り老朽化がすすんだ建築物はそのまま放置され腐敗していくと思うのですが、少彦名神社の歴史はまさに奇跡だと思います。大洲市へ訪れた際は是非、強運を持ったパワースポット少彦名神社へも足をはこんでみてください。
【 オススメポイント 】
少彦名神社の斜面には参籠殿という懸造の素晴らしい木造建築が建っているのですが、ここは初めの方で紹介した臥龍山荘を建築した中野虎雄さんの甥、中野文俊さんによって昭和初期に設計された場所です。(臥龍山荘と同じ懸造です!)ここの懸造は全体の93%が空中楼閣の如く渓谷に張り出す形で造られているため、下から眺めても上から眺めても迫力満点です!是非、色んな角度から見てみてください。ちなみに、この場所まではレンタル自転車を借りてサイクリングのような感覚でも行ける距離なので天気がいい日はサイクリングしてみてはいかがでしょうか?
※懸造(かけづくり):急峻な崖や山の斜面にへばりつくように建てられた建築のこと。別名「崖造り(がけづくり)」とも言われている。有名な懸造は京都の清水寺本堂。日本独特の建築様式「懸造」で建てられた代表的な建造物は日本全国で見ることができるのですが、四国にある懸造の殆どは愛媛県大洲市に集中していると言われています。
■町全体を楽しめる大洲市の活気あふれるまちづくり
大洲市では江戸時代から明治大正時代にかけて造られた古民家群もリノベーションされているので当時の面影が残った古い町並みを堪能することもできます。一時期は高齢化及び人口減少の影響で、ボロボロになってしまった古民家を取り壊す予定だったそうなのですが、地元民の懸命なまちづくり活動のおかけで、現在「分散型古民家ホテル」の姿に生まれ変わりました。ちなみに古民家の改修はできる限り昔ながらの素材や技法で、この地域の大工さんが手掛けたそうです。その他、昔賑わった町家や商店街も整備され、SNS映えするカフェや愛媛県の工芸品など個性的なショップが沢山あります。日本ならではの暮らしを体験したい海外からの旅行者はもちろん、日本の方でも満足できる空間が大洲市にはあるので、是非大洲市へ遊びに来てください!!
■最後に大洲市へ訪れる方へお知らせです
・大洲市は毎年、愛媛県の最高気温をたたき出すことで有名な盆地です。もし夏に大洲市へ旅行を計画される場合は、万全な日焼け対策や熱中症対策をするようにしてください。特に町散策の際は、日傘やうちわがあれと助かります!(暑い時期は、大洲を流れている清流「肱川」の川遊びがおすすめです!)
・大洲市の夜は町の中でも沢山の星を見ることができるので是非携帯電話や時計から離れて、ゆったりと流れる大洲時間を堪能してみてください。その他、夕暮れになると町家の照明が点灯するので、昼の町とは違う雰囲気を味わうこともできますよ!
・電車で大洲城下町へ来る方は、駅から観光の中心部まで少し離れているので注意が必要です。タクシーやバスで移動すると10分程度かかるのですが、ゆっくりと町を味わえたい方は駅から出てすぐ横にある観光案内所のレンタルサイクルを利用してみてはいかがでしょうか?堤防散歩道もあるので、ローカルな商店街や川の景色を堪能しながら移動すると一瞬でストレスを忘れることも出来ますよ!余裕がある方は是非のんびりと大洲の町を楽しんでいただければ嬉しいです。
■愛媛県大洲市へのアクセス
・松山、道後温泉から
JR特急電車で35分または車で約1時間20分
松山空港から直通バスもあります
・高松から
JR特急電車で3時間
・岡山から
JR特急電車で3時間30分
・九州方面から
大分県臼杵港から八幡浜港までフェリーで2時間15分
大分県別府港から八幡浜港までフェリーで2時間30分
・八幡浜から
JR特急電車12分または車で約20分