インタビュー
2022.12.01

トルコ出身の私が日本で生活をしていて困ったこと:かかりつけの病院を見つけること

簡単なプロフィール

■名前:ヌルジャン エリフセルジェン
■国籍:トルコ
■日本での生活:5年目
■趣味:日本の政治学や歴史について書かれた古本探し(近代史が好き)
■現在:明治大学大学院 政治経済学研究科 政治学専攻の博士課程

■日本を留学先に選んだ理由を教えて下さい

 トルコの国立大学は無料です。修士と博士を取得するまでの費用も無料です。しかし、トルコ国内の大学院へ進学しても世界トップレベルの大学と比べると大学全体のレベルがそこまで高くないので、同じ時間を使って博士課程まで終えるのであれば、高いレベルの知識を学ぶことのできる大学で博士課程まで進みたいと思い留学先を探していました。そんな時に家族と進学について話し合っていると、「進学を考えているのなら奨学金を取得することが条件だ」と言われたので、奨学金を取得するためにはどんな方法があるのか、自分が学びたいことが学べる大学は何処なのか、学ぶだけではなく安心して生活できる国は何処なのか探していたところ、
①トルコと比べて情勢が安定していて1人でも安心して生活をすることができる
②自分が学びたいことを学べる環境が整っている
③様々な奨学金制度がある
ということがわかったので、日本を留学先に選びました。

■日本で生活をしていて困ったことを教えてください



 私が日本で生活をしていて困ったことは、かかりつけの病院を見つけることです。なぜなら私は12歳の頃から1型糖尿病を患わっているからです。1型糖尿病とは膵臓のインスリンを出す細胞が壊されてしまう病気なので必ずかかりつけ医の指導を受けながら人工インスリン投与が必要となるのですが、今回は長期期間留学で日本に滞在するため、人工インスリンを処方してくれる病院を日本で探すことにしました。
※人工インスリンは要冷蔵で、使用期限もある薬のため定期的に新しいものを処方してもらう必要がある

 しかし、外国で自分に合った医療機関を探したり自分の病気のことや、普段使っている薬を正確に日本語で伝えたりすることは簡単ではありません。私の場合は当時から日本語で話すことが出来たので、家の近所にあるクリニックへ行くことができたのですが、もし、日本語が全く話せない状態だったら凄く困ったと思います。

 その他、診察後にクリニックの先生が大きな病院への「紹介状」を書いてくださったことで、大きな病院へ行く場合や転院する場合は「紹介状」を書いてもらった方が自分にとって大きなメリットがることも知ることが出来たのですが、これもまた日本語が全く理解できない状態で病気や怪我をしていたら大変だったと思いました。

■日本の大きな病院の不思議と紹介状のメリット

大きな病院の不思議
①診察してもらうためにはクリニックや診療所で「紹介状」を書いてもらう方が良い
②診察を受ける時は受付担当者が選んだ候補日程の中から選ぶ
③通院している場合、平均1カ月に1回は必ず医師の診断が必要(決められた日程を超えて診察を受けた場合は、同じ病名でも「初診」という扱いになり初診料を取られる)

紹介状のメリット
①大きな病院で初診の際、待ち時間が短くなる
②初診料が、紹介状なしで受診した時よりも安くなる
③検査がスムーズ

■そもそも「紹介状」とは?大きな病院へ行くときに紹介状を書いてもらう理由

 最初、「紹介状」がどういうものなのか知らなかったのですが、紹介状は別名「診療情報提供書」という名前で、

患者の基本情報
紹介の目的(検査や入院、手術など)
現在の主症状や病名 
■治療経過
■投薬内容

 っといった患者の情報が紹介状の中に細かく書かれていたため、大きな病院で診察を受ける際、違う病院へ行ってもトルコの病院のように細かく質問をされることがないのだということがわかりました。 日本では小さな診療所やクリニックで簡単な検査は終えて、大きな病院では細かく調べなければいけない検査の時だけ時間をかけて診察します。私の場合は、日本への留学を決めた時から日本の病院システムと向き合うと決めていたので、早い段階でトルコと日本の病院システムが大きく違うことに気付くことができたのですが、もし日本へ留学して日本の病院システムを知らないまま暮らしていたら、自分が怪我した時や病気になった瞬間から不安で大変だったと思います。

■薬を使っている間に何か起きた場合の責任は私ではなく病院ですか?



 トルコで は同じ病状で処方されるインスリンの量が3~4カ月分(最大半年)だったのですが、日本では1カ月(最大3カ月)だったので不思議に思い調べてみました。すると、処方された薬を使用して何かがあった場合の責任がトルコは「半年分処方してほしい」と言った患者側の責任になるのに対し、日本は処方された患者の責任ではなく、全て担当した医者の責任になることがわかりました。その他、同じ病気だった場合でも1カ月以上あけて診察を受けた場合は「初診料」がかかる場合があることも知ったので、 しっかり留学先の医療ルールも調べておく必要があると、この時強く思いました。

■診断書や領収書は必ず確認が必要



 私は、インスリンを打つ時に必要な道具をトルコから持参していたので、日本では道具のレンタルを最初の段階で使用しないと病院側に告げていたのですが、ある日薬局の薬剤師さんが私の領収書を見てレンタルしていない道具がレンタルされたことになっていて誤請求されていると教えて下さいました。当初、確かに請求金額が自分だけ周りの人よりも高かったので不思議に思ったのですが、日本なので・・・料金がトルコより高くてもおかしくはないと妙に納得してしまっていたのですが、後日、日本の一型糖尿病の人が使う道具を見せてもらった時は「え?トルコの一型糖尿病専用の道具の方が最新機種なのに、なんで日本の方が高いの?」と愕然としました。この時、誤請求のことに誰も気づいてくれなかったら今も高いお金を払い続けていたかもしれないと思うとゾッとします。人間誰でもミスはあると思うのですが私にとっては命にかかわるレベルの話なので、このことがあってから請求書や領収書を必ず確認する癖がつきました。皆さんもしっかり確認する癖をつけてくださいね。

■最後に、これから日本へ来る留学生にメッセージをお願いします

 実は今回、インタビューの時間が短くて詳しく説明することが出来なかったのですが、日本には自分の努力次第で受けられる留学生のための奨学金制度が沢山あります。しかし海外での ルールや法律、サポートを受けることのできる制度は、留学生や日本で働く外国人に合わせて定められていません。これから日本へ来る留学生の皆さんも自分にとって必要なことはしっかり調べて、自分のことは自分で守れるようにしておいてくださいね。

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