困りごと・悩みごと・面白いこと
2023.02.27

中国出身の私が日本で生活をしていて困ったこと:溶け込めない日本社会

簡単なプロフィール

■名前:トン ジャチュン
■国籍:中国
■出身地:河南省
■日本での生活:3年半
・日本語学校を経て、現在は大学院2年生です。(あと1カ月で修了)
■これまでの受賞歴:
・中野区主催の作文コンテストを2回受賞(最優秀賞と優秀賞)
・京都府主催の第12回言の葉大賞を受賞(大学部・優秀賞)



 はじめまして!中国の河南省出身、留学生のトン ジャチュンと申します。私は母国の大学でコミュニケーション学を専攻しメディアに関する研究をしていたのですが、担任の先生が日本メディア分野の優れた研究者が書いた著書や論文をたくさん紹介してくださったことがきっかけで日本のメディアに興味を持つようになり、日本へ留学したいと思うようになりました。しかし、卒業後は留学をせず中国のテレビ局へ就職し、ディレクターとして約1年間働いていたのですが、在職中、仕事で日本のコンテンツを複数視聴した際、日本人の発想力とコンテンツの素晴らしさに感動した私は再び「日本へ留学をしたい」という気持ちが強くなったので、2019年10月に日本へ留学しました。現在は大学院生として在学していますが、大学院修了後は日本の制作会社で働くことが決まっています。

■日本で生活していて困ったこと:溶け込めない日本社会


・理想:日本人の友人をたくさん作り、深い人間関係を築きたい
・現実:深い人間関係どころか、どのようにすれば「友人」と呼べる関係になれるのかがわからない

■理想:母国での生活環境と同じ留学生活をおくりたい

 日本での留学生活をはじめるまでの私は、留学したらたくさんの友人を作り、一緒に日本各地を旅行したり、日本文化を教えてもらったり、美味しいものを食べたりしながら充実した日々をおくりたいと考えていました。これは私だけではなく多くの中国人が同じような理想を描いていると思います。なぜなら、中国社会では深い人間関係こそが最も重要だと考えられているからです。

理想を求めてしまう理由①:「集落暮らし」という住環境の影響





 中国の住宅事情の1つとして、中国人は集落で暮らすという特徴があります。例えば、地方に行くと、ほとんどの中国人が「村」という単位ごとに区切られている場所で生活をしているのですが、「村」に入ると、一軒一軒離れているのではなく家と家が密集して建てられています。そして村人は毎日特定の場所に集まって会話をしながら村人同士ご飯を食べたり子どもを連れて遊んだりして生活をいます。そのため、血の繋がりのなくても家族のように深い所で繋がっているような関係を築くことができます。

 その他、都市に行くと、一般的な中国人(別荘を持っているお金持ちを除く)は「小区」という単位ごとに区切られている場所で生活をしているのですが、1つの「小区」には、日本の団地のような建物が複数建てられていて、そこにはたくさんの人が住んでいます。また「小区」には、全てのビル(及び住民)を管理する「居委会」と呼ばれる部門があり、この「居委会」が存在するからこそ、大きなトラブルもなく住民間の人間関係を保つことができます。さらに、「小区」の中には「居委会」だけでなく、ジム、コンビニ、公園などもあるため、これらの施設を通じて住民間の交流を深めています。そのため、このような集落の住環境で生まれ育った中国人学生達は、住民同士昼夜を共に過ごし深い関係を築くことこそが重要であり、仲良くなるための秘訣だと疑わないのです。

※「小区」は中国語で「XiáoQū」と読み、日本の「区」とは意味が違います。「小区」は塀で囲まれた独立した区域なので出入りできる場所が決まっていて管理人が24時間駐在している出入口からしか入ることができません。そのため非住居者は許可なく勝手に入ることはできません。

理想を求める理由②:「中国式」教育の影響

 この他、中国の学校に入ると小、中、高、大学を問わず学生たちは集団で行動する人が多いという特徴があります。そのため、集団で行動をせず常に1人で行動をすることを好む学生は「団結しない」「変人」「何か問題を抱えている」などのレッテルを貼られてしまい群れる学生に敬遠されるようになってしまうため、集団行動をとる必要がある際、集団に入りにくくなってしまいます。(ちなみに、これらの問題はイジメ問題にもつながることもあります。)中国の学校教育において、「団結心」の育成はとても重要とされているので、ホームルームなどでも常に先生から「友達と一緒に行動してください」「集団行動を大切にしてください」と言われます。つまり、「単独行動」はその呼びかけに反する行為なので、1人で校内歩いていると、「性格が悪いから友人がいない」「きっと何らかの問題があるから友人が作れない」と噂されてしまうのです。そのためこのような環境で育ってきた中国人学生にとって共に行動する友人が作れないまま単独行動すると「レッテルを貼られるかもしれない」という恐怖感がうまれてしまうため「本音や個性を抑えて集団に溶け込もう」と思う学生が増え学業やプライベートも常に一緒に過ごすことのできる友人が欲しいという衝動に駆られてしまうのです。

■現実:理想とかけ離れていた留学生活




※この話を始めるまえに説明しておきたいのは、私が来日したのは2019年10月で、約2カ月後の12月に新型コロナウイルス感染症が発見され、その後感染症拡大の影響で授業が全てオンライン授業に変わってしまったことも留学前に抱いていたイメージと異なった原因の1つであり、コロナ感染症拡大前なら少しは印象が違ったのかもしれません。

 希望を抱え日本へ留学してから3年弱。実際に日本で生活をはじめてみると留学前にイメージした留学生活と現実は凄くかけ離れたものでした。例えば、レストランを利用する際、日本では1人用の席が多く、映画館でも1人で映画を観ている日本人をよく見かけるのですが、中国では日本の真逆で、レストランに1人用の席はほとんど用意されておらず、映画館に1人で訪れるのは凄く珍しい光景です。また、所属している大学院の研究室に日本人学生がいるのですが、彼らとはいくら話してもその関係は表面にとどまり、たまたま同研究室に所属しているゼミ生の1人としか感じることができません。そのため、日本で生活をしていると、どのように日本人に接したらいいのか、どうすれば日本社会に溶け込めるのか、また日本人はどうやって友達を作っているのか、何をして友人との関係を保っているのかなどの問題をよく考えるようになってしまいました。

■解決方法:一体どうやって日本人の友人をつくればいいのか

(もちろん完璧な解決法は今も探している途中ですが)それでは、最後に日本で3年以上暮らしている留学生の先輩として、これから日本へ留学してくる後輩達へ自分が見つけた「日本人の友人を作るコツ」をシェアしたいと思います。

日本人の友人を作るコツ①:積極的に学内外のイベントや活動に参加する




 本当に日本社会に溶け込みたい!日本人の友人が欲しい!と思うのなら自分から行動をしてみましょう。たとえば、インターネットやSNSを使い、民間団体が開催や募集しているイベントを検索して「私も参加してみたいのですが、よろしいでしょうか?」「とても有意義な活動だと思うので、ぜひ参加させていただきたいです!」と、メールかDM(ダイレクトメッセージ)を送ってみるのもいい方法です。近年、日本政府が「共生社会」や「多様性のある社会」を提唱しはじめたことで、外国人である自分も参加してみたいという思いを相手に示せば、参加できる可能性が高いと思います。この他にも大学に在学中の学生なら、サークル活動に参加するのが1番オススメです。そして、サークルに加入した後は、自分から積極的に連絡を取る姿勢も大事だと思います。つまり、相手に何回も会って話した後に「美味しいお店を見つけたのですが、一緒に食べに行ってみませんか?」と自分から提案することでコミュニケーションを取るチャンスが増え、友人を増やすことができるのです。(自分が日本で実際に人間関係を観察してみた結果、日本人から留学生を誘う可能性は低いと感じています。そこで、このように少しずつ相手との距離を縮めていけば次第に「友人」と呼べる仲になれると感じました。)

日本人の友人を作るコツ②:外国人としての長所を活かす




 「長所」と聞くと、「自分には何の長所もない」と思う人がいると思うのですが、実は私たち留学生全員、日本人学生が持つことのできない長所があることを知っていますか?それは「日本以外の国から訪れた留学生」という長所です。もちろん視点を変えると、「短所」になることもあるのですが、私はこの「留学生」という長所を利用して、たくさんの学校を回って「国際理解授業」の非常勤講師を担当しています。「国際理解授業」とは、母国のことを紹介したり日本人学生と国際交流をしたりする活動のことです。この活動にチャレンジしてみたいと思った学生は、今住んでいる場所の市役所ホームページ(特に国際交流担当の部門)をチェックしてみてください。きっと何らかの情報を見つけることができると思います。この他にも様々なサイトを検索すると県民同士の交流会やホームステイができることもあるので本当にオススメです。きっと参加しているうちに、日本人との接し方や日本社会に対する考え方も変わり勉強になると思うので、ぜひ皆さんも自分からアクションをおこしてみてください!

■これから日本へ来る留学生たちへ

 留学をすると人間関係以外にも悩んだり困ったりすることが次から次に訪れ、1人では抱えきれなくなることがあると思います。その時はぜひ1人で我慢するのではなく、周りの先生や先輩に相談してください。そして、今の自分を少しでも変えたいと思うのなら自分から行動してみてください。きっと素敵な出会いが待っていますよ!!

トン ジャチュン

国・地域
中国
居住地
茨城県
得意カテゴリ
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