■私の経験を共有したい!
こんにちは。台湾の台南出身、胡 智偉(コ ツイ)と申します。私は、2002年に台湾の台北で開催された戦後初となる日本プロ野球公式戦「ダイエーホークスvsオリックス」を観戦したことがきっかけで日本プロ野球のことが好きになり、大学卒業後はFIT(※個人手配の海外旅行)で福岡へ旅行をしました。当時は西武ライオンズにエース松坂大輔選手や台湾出身のエース張 誌家(ジャン・ズージャ)選手、台湾プロ野球界でも活躍していたアレックス・カブレラ選手が所属していたので西武ライオンズを全力で応援をするぞ!と野球観戦を楽しみにしていたのですが、なんと私が観戦を予定していた日は、日本初の労組・日本プロ野球選手会によるストライキだったため、3連戦中わずか1試合しか観戦することができず不完全燃焼のまま帰国することになりました。しかし、その後も日本プロ野球や日本への興味が冷めることはなかったので、2010年に今度は留学生として来日しました。それから月日は流れ現在は日本国籍を取得し、家族と共に大阪で生活をしているのですが、長年日本で生活をして学んだことや得意分野を活かし、これから日本へ訪れる外国人に向けて様々な情報を発信していきたいと考えています。よろしくお願いいたします。
■日本で生活をしていて困ったことは日本での就職活動
今回は台湾と日本の両方で就職活動をしたことのある自分の経験を活かし、日本で就職をしようとしている留学生達へ向けて記事を書きたいと思います。それでは、はじめに台湾と日本の「就職」に対する考え方の違いや特徴から見ていきましょう。
■台湾で就職活動をする場合
①台湾出身の男子は満18歳から満36歳の期間が徴兵対象年齢とされているため、この期間中に「当兵(ダンビン)」と呼ばれる兵役へ行かなければならない
②基本は大学・高校卒業後に召喚状が届くが、10日前になって急に召喚状が届く人もいる
③男子学生の場合はあまり就職活動のことを気にせず、卒業までの授業、部活、遊びなどに集中する傾向がある
年々期間が短縮されてはいるのですが、実は台湾にも徴兵制度があり、台湾出身の男子学生は満18歳から満36歳までの間に「当兵(ダンビン)」と呼ばれる兵役へ4カ月間行かなければなりません。そのため、日本の学生達のように高校卒業直後や大学3年生の頃から就職活動をするという習慣はなく、学生の間は学生生活に集中する傾向があります。しかし、既に兵役を終えている男子学生や徴兵対象外の男子学生、女子学生、大手企業への新卒入社を希望する学生の場合は大学4年生から就職活動をします。
■台湾企業の特徴
台湾は大企業よりも中小企業が多いのですが、企業の規模や職種に関係なく毎年人手不足に悩まされているため、履歴書を提出すれば1回目の面接で採用になり、翌日から仕事をスタートさせるなんてことがよくあります。ちなみに私の場合は、台湾国内で約40%のシェアを持つ日本の運送最大手企業への就職を希望したので、アルバイトとして数か月間働いた後に正社員として採用されました。(大手企業の場合は慎重に正社員を決めるため、一旦アルバイトとして採用し、数か月後に正社員にするパターンが多い)しかし、日本のように転職せず定年退職まで同じ会社で働く人は少なく、平均1、2年で転職をする人が多いため企業側の人手不足が解消されることはありません。
■日本で就職活動をする場合
①「新卒一括採用」という言葉があり、就職後の成長力を見越して採用したり、協調性を最も重視したりする傾向がある
②平均大学3年生の6月頃から準備を始め冬頃からは履歴書やエントリーシートを企業に提出する
③大学の長期休業を利用して興味のある業界でインターン(就業体験)を行う
日本では3月末に卒業する学生を一括で採用するという意味の「新卒一括採用」という言葉があり、沢山社会人経験をしてきた人よりも、就職後の成長力を見越して経験のない学生を採用したり、協調性を最も重視したりする傾向があるのが特徴です。さらに「暗黙のルール」と呼ばれている就職活動ルールが存在し、日本独自の考え方を理解した上で業界ごとのローカルなルールを守る必要があります。これは、明確に「やってはいけないこと」としてアナウンスされていないため、海外から来た留学生が就職活動を行う際、1番壁になることだと思います。その他、学生の頃からインターンを経験したり、書類選考、適性試験、集団面接、個別面接と様々な入社試験があったり、1社だけに絞って内定をもらえる人もいれば、何十社受けても内定がもらえない人もいるため「内定」を貰うために様々な壁を乗り越える必要があります。
■日本企業の特徴
日本は人手不足の企業は存在するものの、何十年たっても足並みを揃えて新卒採用をする傾向があり、日本での就職を希望する人は個性よりも無個性重視や協調性を発揮する必要があります。そして、世界的にみても珍しいことだと思うのですが、日本では新卒で採用されてから定年退職するまで1度も転職をしないことが多く、履歴書に転職歴が多いと悪い印象を持たれることが多いため、転職が当たり前という考えを持っている国の人が日本で就職活動をする場合、どんなに才能を持っていても履歴書審査の段階で落とされる可能性が高くなります。ちなみに中途採用の場合は企業ごとで募集時期が異なるため、予め転職に向けて募集時期を調べて把握しておく必要があります。
■インターシップの違い
台湾にも「インターシップ」のような制度はあるのですが、日本と違う点は授業を受けずにおこなうのではなく、週末や祝日、または夏休み、冬休み、春休みなどを利用して行うことが多く、インターンを経験した企業から採用になる可能性が高いです。その他、日本では「インターン=社会経験」だからと正社員と同じ仕事の量をこなしたとしても給料が支払われないことがあるのですが、台湾では最低限の給料が支払われます。しかし日本でインターンを経験した場合は応募すれば誰でも希望の会社でインターンを経験できるのではなく、先着順や抽選、エントリーシートなどでの書類選考、インターンのための面接など、インターンを経験する前に就職活動と同じくらい苦労しなければなりません。
■日本での就職で困ったこと
日本での就職を希望する外国人にとって1番困ること。それは、社会経験や知識のある人を採用するのではなく、社会経験のない新卒の学生を多く採用したがる傾向があるということです。留学生の多くは母国で社会経験をした後に留学する場合が多いのですが、そうなると本来評価されるべき経験や年齢が不利となり、履歴書の書類選考で落とされてしまいます。その他、入社試験に国籍関係なく「(日本の)一般常識」という科目があるのをご存じでしょうか?これは日本人であれば簡単な問題なのかもしれないのですが、子供の頃から日本で生活をしていない外国人留学生にとっては、とても難しい内容です。そもそも、社会経験やスキルは問われず新卒を多く採用しているのに、日本国内だけの一般常識を国籍関係なく入社試験で重視する必要があるのでしょうか?これが、ビジネスに関する専門知識だけを問う試験ならば納得できるのですが・・・。母国での社会経験後に日本が好きで留学生として来日した私にとって日本企業に日本国内で入社するということは想像以上に困難なことが多く困りました。
■日本で就職する際、気をつけた方がいいこと
①履歴書の書き方は学校の先生、またはプロの方に見てもらうこと!
日本で就職活動を行う際は、日本独自の書き方やポイントがあるので、書き終えた後は必ず学校の先生、またはプロの方に見てもらうようにしてください。その他、パソコンで提出できる場合は問題ないのですが、手書きで履歴書を書かなければならない場合は誰が見ても理解できるように綺麗に文字を書き、履歴書で使用する写真は再利用せず毎回新しい写真で提出するようにしてください。あと、写真の裏面には必ず履歴書の提出日や自分の名前を記入するようにしてください。
②職務経歴は見やすく、具体的に書くこと!
先程は、日本で就職をする際、社会経験やスキルがあまり評価されないと紹介したのですが、職務経歴を見て高く評価される場合もあるので、面接官が一目で理解できるよう、スキルや功績は「見やすく」「具体的に」記載するようにしてください。
③面接を受ける時は、ありのままの姿で正直に答えること!
面接官は筆記試験以外の情報を知りたい場合が多いため、突然予想していなかった質問をされることがあります。この場合、臨機応変に対応することも大切だとは思うのですが、面接官に合わせて別人のような姿を見せるより、ありのままの姿で面接を受けた方がいいと思います。なぜなら、面接官の多くは会社の雰囲気と応募者の雰囲気が合うかどうかを見て採用を決める可能性が高いからです。この場合、別の人格が評価され採用されてしまうと入社後に職場の雰囲気が合わず退職してしまうことがあります。一生懸命頑張って入社したのに直ぐ退職の道を選んでしまうのは時間も気力ももったいないですよね。
日本だけに限らず就職活動をする際は、精神面で強くならなければならないことが沢山あります。私自身、何度も書類選考で落とされたり、面接で失敗したりしたことがあるので、就職活動をしていた頃は自分自身の存在自体を否定されているような気になり酷く落ち込んだことがあります。しかし、「就職活動」の壁を乗り越えるためには頭の中や心の中を1度整理して、次の面接へと挑戦していくしか方法はありません。1度面接で落とされた時の面接官とお話をさせてもらう機会があったのですが、「面接で落ちた原因はあなたの実力不足ではなく、会社との「縁」がなかっただけです。自分自身を否定するのではなく、「縁」のある会社が必ずあるので挑戦することを諦めないでください」と言われ心が軽くなった経験があります。だから皆さんも面接で思うような結果がでずに落ち込んだ時はこの言葉を思い出して自分と「縁」のある会社を探して見ましょう。
■まとめ
私の就職活動は2012年から始まり、2016年に大手企業から内定を貰うまで長い年月と沢山の挫折がありました。心も体もボロボロです(笑)でも、諦めずに何度も挑戦していたある日、友人から誘われて参加した山陽電鉄の電車祭りで台湾観光ブースのプロモーションスタッフとして強風の中ステージに上がり台湾観光のPRを頑張った結果、その姿を見てくれた人の中にインターンでお世話になった南海鉄道の専務がいたことで書類選考や面接をすることなく入社することが決まりました。これも今までの努力と自分の強運が引き寄せてくれた会社との「縁」ですよね?努力しても報われないことが沢山ある世の中ですが、留学先での就職という高い壁を乗り越えていくためには自分を信じて諦めず立ち向かっていってください。きっと素敵な会社との「縁」に出会うことが出来ますよ!最後まで読んでくださり、ありがとうございました。